微量でも驚異の貢献度 各種ミネラルの働き

これで納得!ミネラルがもたらす生理作用の数々

桜井 弘 著 2000.01.24 発行
ISBN 4-89295-403-9 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


鉄(Fe)

微量でも驚異の貢献度 各種ミネラルの働き

吸収率が違う動物性鉄と植物性鉄
かつてボースウレルは、鉄について次のような含蓄ある言葉を残した。「ヘム鉄(動物性鉄)は非ヘム鉄(植物性鉄)と比べると、はるかに腸管から吸収されやすい。人間は太古の狩猟採取生活から農耕生活に生活形態を移すことにより、食べ物中の鉄の主体がヘム鉄から非ヘム鉄に変わり、鉄欠乏を起こすようになった」
成人の体には、鉄は五―六g含まれ、微量元素の中では最も多量に存在する金属である。女性は男性の約七〇%しか鉄を持っていないが、これは体重や体格の差ではなく、月経、妊娠、分娩など女性に特有の鉄の排泄があるためである。
体の中の鉄は、機能鉄と貯蔵鉄に分けられる。
機能鉄には、(1)赤血球の赤い色素ヘモグロビンのヘム鉄、(2)筋肉細胞の赤い色素ミオグロビンのヘム鉄、(3)細胞中のシトクロム類、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ類などのヘム鉄酵素、そして(4)鉄硫黄タンパク質を代表とする非ヘム鉄酵素類が挙げられる。
ヘモグロビンは酸素分子を結合し筋肉細胞へと酸素分子を運ぶ働きをし、筋肉細胞のミオグロビンは酸素分子を受け取り、それを蓄える機能を持っている。その他のヘム鉄酵素や非ヘム鉄酵素は細胞内の電子伝達や生体分子などの酸化作用に関与している。
体の総鉄量の六五%はヘモグロビン、三―五%がミオグロビン、〇・三%がその他のヘム鉄、非ヘム鉄が占め、残る三〇%は貯蔵鉄である。
貯蔵鉄には、(1)フェリチンと、(2)ヘモシデリンと名付けられた巨大タンパク質が知られている。フェリチンは水に溶けるタンパク質であり、分子量は四五万もあり、鉄を四五〇〇個も結合できる。ヘモシデリンはフェリチンが変性して凝集したものであり、顕微鏡下で顆粒状に見える。これらの両タンパク質はいづれも生体が鉄を必要とした時に、鉄を放出して供給する機能を持っている。
鉄は一日に約一rが体から失われるため、食べ物から補わなければならない。わが国では最近、小児、男性、女性、妊娠中の女性などについて詳しい摂取量が設けられている。およそ一〇―一二rが基準で、特に妊娠中の女性は一日に二〇rが必要とされている。
食物の中の鉄は十二指腸と回腸上部から体内に吸収される。しかし、鉄は腸管からの吸収率が低いため欠乏しやすい。食物中の鉄は、胃液(塩酸)、膵液、胆汁や腸液などの作用により、吸収可能な化学形に変化する。非ヘム鉄は消化液の作用を受けて、鉄(2+)として吸収される。鉄(3+)は吸収されにくいが、ビタミンC(アスコルビン酸)などの還元剤があると鉄(2+)となり、吸収されやすくなる。
一方、ヘム鉄はそのままの形で吸収される。牛肉、牛レバーや魚肉が貧血予防のために多くとるようにと奨められるのはこのためである(図4)。
貯蔵鉄および血清中の輸送鉄のみが欠乏している状態は、潜在性鉄欠乏とよび、この状態に貧血が加わると、鉄欠乏性貧血という。身体のみならず精神生活にも悪い影響が現れる。鉄欠乏への対策には、ヘム鉄摂取量を増加させるとともに、非ヘム鉄の腸管からの吸収率を促進させる、例えば、新鮮な野菜を多くとったり、ビタミンCを服用するなどの工夫をすることが大切である。


※図省略


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