体の中の鉄のはたらき

貧血予防・意欲向上などに欠かせない微量栄養素

桜井 弘 著 1997.11.25 発行
ISBN 4-89295-383-0 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


ヘモグロビンなしに生きていけない

体の中の鉄のはたらき

太古の海にたくさんあった鉄イオン
地球が誕生したのは、今から約46億年前と言われています。水の惑星・地球の当時の海には、酸素分子はほとんどなく、海の中にはたくさんの鉄イオン(還元型の二価鉄イオンでFe2+と表します)が溶けていました。
この鉄イオンは、当時“突然発生”した海藻が徐々に放出する酸素分子と反応して、大部分は水酸化鉄〔Fe(OH)2やFeO(OH)〕といわれる水に溶けない形となり海の底に沈んでいきましたが、残っていた鉄イオンは、当時の原始的な反応により合成されていた簡単な有機化合物と結合しました。
これらの鉄イオンと有機化合物の結合体(一般的に、金属イオンと有機化合物とが結合してできたものを錯体とよんでいます)では、鉄イオンが簡単に電子のやりとり――[Fe2⇔Fe3+ +e(電子)]――をするため様々な反応を引き起こすことができたと考えられます。その典型的な一つの例として、先に紹介したヘム鉄(図1右上=10頁)が挙げられます。

「ヘム鉄」+「タンパク質」の結合
一方、いろいろなアミノ酸が合成され、それらが連結して無数の組み合わせとして様々なタンパク質ができあがりました。それらの中の一つが先ほどのヘム鉄と結合して出来上がったのが「ヘモグロビン」です。
ヘモグロビンは酸素分子と結合する能力を持つため、徐々に地球上に増えてきた酸素分子と大変容易に結合することができました。
このヘモグロビンが、どのようにして赤血球の中へ取り込まれていったのかの謎は解明されていませんが、ヘモグロビンを多量に含む赤血球を作ることは、酸素分子を呼吸に使って生きる地球上の新しい生物にとっては必要不可欠なものとなりました。

人間は海を起源にした生き物
しかし、赤血球にはエネルギーを与えなければなりませんので、血液には血漿といわれる豊富な養分を含んだ溶液があります。つまり血漿の中に、赤血球や白血球あるいは血小板などの血球が浮かんでいるのが血液にほかなりません。
この血漿中の元素濃度を、海水の元素濃度と比較した表2(=13頁)をご覧ください。全体の傾向はよく似ていると思われるでしょう。人類が進化していく過程で、生物は海水中に含まれる様々な元素を積極的に用いたり、除いたりしたと考えられています。
たとえば、マグネシウムは血漿中の濃度は海水中の濃度よりもかなり低くなっていますが、反対に鉄の濃度は血漿中では高くなっています。多少の変動はあるにせよ、海の中に見出される元素は、私達の血漿中にほとんど存在しています。
つまり、私達の血漿は“体の中の海”なのです。言い換えれば、私達は、海を起源にした生き物なのです。


※図表省略



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